茶谷民子展 作品集発行記念〜花は色 人は心〜 | |
会期 | 2022年4月1日(金)〜4月6日(木) |
時間 | 11時〜18時 ※最終日17時まで |
作家 | 茶谷民子 |
花は色 人はこころ 〜茶谷民子作品集〜によせて
あまの しげ(美術家)
茶谷民子さんは、音楽が専門で、音楽で培われた審美観は従前の感性だろうと思います。しかし、絵画制作は、材料(絵具やカンヴァス)とのせめぎ合いで、手は汚れるし、物質と悪戦苦闘しなければならず、ピアノ演奏のようにドレスに着飾ってはできないわけです。そんなわけで、当初は戸惑いもあり、素材にも抵抗があったかもしれません。すべてが新鮮に映ったはずでしたが、焦らずマイペースで励んでおられます。
作品は、その人柄が示すように、穏やかで、欲のないものです。上手く描いてやろうとか、よく見せるにはどうすればいいかなどは考慮の他、そのことが返って見る人の共感を得ます。専門家と称する者もアマチュアだと云って憚らない人でも、欲が全面に出て、見る側の人になにかしら圧力を与えることがあります。その意味でも茶谷民子さんの作品は衒い(てらい)がなく、そのため見る側も肩を張らずに鑑賞することができます。
それらの特質は色彩のハーモニーにも現れています。花や卓上の静物を描いても風景を対象にしても、饒舌や華美に陥らず、それでいて豊な色と色の調和をつくっています。例えば、一連の水彩画でも執拗な模索を繰り返したり、一方で淡白に過ぎる味気ない水彩画にもなっておらず、見る人を惹きつけます。パステル画でもそれらの画面は変わらず、穏やかさのなかに、暖かい空気を満喫しています。
それを感じさせるのは、色の力です。その力を引き出させるのが作者だと思います。
茶谷民子 作品集「花は色人はこころ」より引用